PIC解説

【PIC】SPI通信のやり方

投稿日:2020-08-15 更新日:

多くの PIC に搭載されている MSSPモジュールを使うと I2C と SPI の2つのシリアル通信を行うことができます。

今回は SPI通信のやり方(マスター)を紹介します。

I2C についてはこちらを参照してください。

【PIC】I2C通信のやり方

SPI通信とは

まず初めに SPI通信について軽く紹介します。

SPI通信ではマスターとスレーブがそれぞれシフトレジスタを持っていて、クロックに合わせてその値を交換します。

通信に必要な線は、INPUT、OUTPUT、クロックの3本と、スレーブ1つにつき1本のスレーブ選択用の線となります。

スレーブが複数あっても2本で通信できる I2C に比べて、多くの線が必要となるのはデメリットと言えます。

では、SPI のメリットは何かというと、通信速度の速さが挙げられます。I2C のクロック周波数は主に 100kHz や 400kHz ですが、SPI では 1MHz 以上(PIC のクロックに依存しますがもっと)出すことができます。

センサーなどのほかに通信量の多い液晶や SDカードとの通信などに使われます。

 

SPI通信の種類

SPI通信を行うときに注意しなくてはいけないのは、SPI通信には次のようにいくつもの種類があるということです。

  1. クロックのアイドル状態:Low / High
  2. 送信タイミング:Idle to Active / Active to Idle
  3. 受信タイミング:中央 / 後縁

Timing chart

統一されていれば楽なのですが、デバイスに合わせて設定しなければいけません。いきなりこれを見てもよく分からないと思うので、具体的な事例で確認してみましょう。

 

今回はこちらの温湿度・気圧センサーBME280を使用します。データシートを確認してみると、SPI通信のタイミングチャートが載っていました。

BME280 SPI timing chart

この図から次のことがわかります。

  1. クロックのアイドル状態:High
  2. 送信タイミング:Active to Idle
  3. 受信タイミング:中央

このようにデータシートを確認して通信の種類を決定しましょう。

 

SPI制御レジスタ

続いて、SPI通信を制御するためのレジスタについて説明します。MSSPモジュールは I2C と SPI の両方をサポートしていますが、今回は SPI のマスターに関わる部分だけ説明します。

以下、レジスタ名に “x” が登場しますが、これは MSSPモジュールを複数搭載している場合にその総称として用いています。

実際に使用するときには、1または2、MSSPモジュールが一つだけの場合は何も無いものとして解釈してください。

SSPxSTAT

SSPxSTAT

SMP (SPI Data Input Sample bit)
受信サンプル位置
1:後縁  0:中央
 
CKE (SPI Clock Edge Select bit)
送信エッジ
1:Active to Idle 0:Idle to Active
 
BF (Buffer Full Status bit)
1:SSPxBUF にデータあり  0:データなし

SSPxSTATレジスタでは、クロックの設定とバッファフル状態の確認ができます。他のビットは I2C のときのみ使用するビットです。

 

SSPxCON1

SSPxCON1

WCOL (Write Collision Detect bit)
1:Write衝突発生  0:正常SSPOV (Receive Overflow Indicator bit)
1:受信オーバーフロー発生  0:正常
 
SSPEN (Synchronous Serial Port Enable bit)
1:SSP有効化  0:無効化
 
CKP (Clock Polarity Select bit)
クロックのアイドル状態
1:High  0:Low
 
SSPM (Synchronous Serial Port Mode Select bits)
1010:SPIマスター Clock = FOSC/(4 * (SSPxADD+1))
0011:SPIマスター Clock = TMR2/2
0010:SPIマスター Clock = FOSC/64
0001:SPIマスター Clock = FOSC/16
0000:SPIマスター Clock = FOSC/4

SSPxCON1レジスタでは SPIのモードなどを設定します。最初の二つのビットは使わないで大丈夫です。クロックの周波数は迷ったら一番速い 0000 にしておけば大丈夫だと思います。

SSPxBUF

SSPxBUFレジスタは送受信に使うバッファです。

このレジスタに値を書き込むことでその値が送信され、同時に受信した値はこのレジスタを読むことで取得できます。

 

サンプルプログラム

続いて、先程のレジスタを使用するサンプルプログラムを紹介します。

まずは、初期化と1バイトを交換する関数です。

SPI の設定は今回使用する BME280 に合わせています。

交換の関数ですが、引数を送信し、受信した値を戻り値として返します。送信のみの場合は戻り値を無視し、受信のみの場合はダミーのデータを送信します。

 

次に、BME280 の通信プロトコルを確認してみましょう。

書き込みBME_write

読み出し

BME_read

これを参考にして作ったコマンド書き込みとデータ読み出しの関数がこちらです。

CSはチップセレクタピンで、#define で指定しておきます。

I2C と異なり、SPI ではスレーブアドレスを送信する必要がない代わりに、Read/Write をレジスタアドレスの先頭ビットに指定する必要があるようです。

 

動作確認

それではこのプログラムを使用して、温度を読み取って LCD に表示させてみたいと思います。今回使用するものは以下の通りです。

  • PIC16F18857
  • 温湿度・気圧センサーBME280
  • I2C接続LCD

LCD に I2C を使うので、センサーも I2C を使えばいいのですが、今回は SPI の動作確認なので目を瞑りましょう。

プログラムは以下の通りです。I2CLCDセンサーの使い方はそれぞれリンク先のページで説明しているため、ここでは省略します。必要に応じて参照ください。

I2Cライブラリ

LCDライブラリ

PIC16F18857 では SDO と SCK のピンがデフォルトで割当て先が決まっていないので PPS の設定をしておきます。

また、I2C では SCL や SDA のピンは入力にしますが、SPIでは普通の感覚で SCK と SDO は出力、SDI は入力にします。

回路図はこんな感じです。

Schematic

無事に動作確認できました。暑いですね…

Operation_check

この記事は以上となります。ご覧いただきありがとうございました。

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